〈五~七時間日〉シンナー・マリファナ・覚せい剤

シンナー経験者が一割も

保健体育の「アルコール・薬物」の授業もこれまでに、1、薬物依存の特徴、2、アルコールの害、3、未成年者と飲酒、4、女性と飲酒、と四時間終了しました。残り三回の授業をここに紹介します。テーマは、5、シンナーの危険、6、マリファナの危険、7、覚せい剤の危険、です。
この三時間を終えた後、翌週はまとめてビデオを観せます。『シンナーと覚せい剤・麻薬』(一橋出版刊)と『ダメ、ゼッタイ。シンナー団をやっつけろ』(財団法人・麻薬覚せい剤乱用防止センター刊)。合わせてちょうど五十分です。
では、授業に入りましょう。「シンナーやったことあるか」。私は教室に入るなり聞きます。もちろん、みんなの前で手を上げる生徒はいません。それでもたいてい何人かが、下を向きへへっと笑う姿が自に飛び込んできます。それを見て、こちらはなるほどと思うのです。
次に、「友達がやってるの見たことあるか」と、聞きます。今度はぱらぱらと手が上がる。そこで手を上げた生徒に何を見たか説明してもらいます。「ビニール袋で」、「ティッシュで包んで」、「コlラに入れて」密売の現場を見たという生徒も現れたりします。こうなると教室全体が、シンナーは自分たちのごく身近にあることを実感しはじめます。
実は前もって生徒から、シンナーについてのアンケートを取つであるのです。ある学年の男子の経験者一0・三パーセント、女子六・三パーセント。シンナー吸引の現場を見たり、吸引したと思われるところを見たことがあるものは、男女ともに三Oパーセントを越えています。ちなみにこのアンケートでは、シンナーを吸う理由は何だと思うかについても聞いています。多い順から、
1、興味・好奇心
2、嫌なことがありいらいらして
3、人のまねをして
4、本人の意思が弱いから
5、ただ何となく
6、むりやり
7、不良だから
となります。生徒たちの感覚は、ほとんどの教師が考えているものとは異なるようです。シンナーを吸うのは「不良だから」ではないのです。また、115まではどれも、誰にでもあてはまりそうな理由ばかりです。要するに、子ども達はほとんど遊び心でシンナーなど薬物に手を染めているのです。

心に深い傷を残すシンナーの害

では「シンナーにはどんな害があるか」と、質問すると、こんな答えが返ってきました。「頭がばかになる」、「中毒になる」、「歯が溶ける」など、生徒にも何となく怖いものという印象はあるのです。そこでここでは、シンナーを吸うと身体と心にどのような害があるか、具体的に解りやすく教えなければなりません。
シンナーを吸引して、いわゆるラリッた状態の若者を時々見かけますが、これはシンナーの急性影響なのです。シンナーはアルコール同様脳の働きを抑制し、麻市博させます。すなわち酪町作用と麻酔作用です。これが進むと延髄の呼吸中枢が麻癒して死に至ることもあります。危険なのは、麻療の進む速度がアルコールよりも早いことです。
知覚異常や幻覚も起こります。「体が浮いている」、「口から小人があふれでくる」、「友達の顔が恐ろしい表情に変わり目分に襲い掛かってくる」等々です。それから、長期間吸引すると慢性影響が現れます。
慢性気管支炎による咳、疾。末梢神経炎による手足のしびれ、歩行困難、筋肉萎縮。視神経の萎縮。再生不良性貧血。肝臓・腎臓の障害。脳の萎縮。そして、落ち着きがなくなる、無気力になるなどの性格的変化や有機溶剤精神病といわれる幻視、幻聴、妄想、異常行動などでいずれも深刻な症状です。
これだけ上げると生徒たちの目は大きく見開かれ、しだいに真剣に耳を傾けてきます。また、授業の冒頭で見せたビデオの生々しい映像もよみがえってきて、衝撃を受けるようです。さらには、こうした障害の中には、シンナーを止めても回復しないものもあることを教えると、いよいよショックは大きくなるようです。たとえばシンナーを止めた後でも、吸っていた当時の幻覚が突然よみがえる「フラッシュパック」などの症状を話すと、一層興味を示します。

マリファナは害がないか

かなりの生徒が、マリファナは「たばこほど害がない」と聞いているといいます。まずこれが間違いであることを明らかにしなければなりません。マリファナには発がん物質であるベンツピレンがたばこの一・七倍も含まれていること、そして、生殖器への影響があることを説明します。それから、有害性を分かりゃすく教えるために効果的なのは、ねずみの実験のスライドを見せることです。大麻の主成分はTHC(テトラヒドロカンナビノlル)ですが、このTHCの投与をつづけたねずみは互いに攻撃し合い、相手が死んだ後まで死体を噛みつ。つけるというすさまじいものです(Mouse-Killing behavior)。
もちろん、人間はマリファナをやって相手をかみ殺したりはしませんが、生徒たちに是非知ってもらいたいことは、こうした薬物を使用することによって正常な感覚が失われ、「自分が自分でなくなること」の危険、恐ろしさです。気持ちがよくなるとか、マリファナパーティで心の解放ができるとか、ふとした出来心や甘い誘惑に乗せられて、生徒たちが取り返しのつかない深みにはまるようなことになってはならないのです。

しのびよる覚せい剤

覚せい剤についても生徒たちには危険な誤解があります。大抵の生徒たちは、覚せい剤は暴力団がやるもので、自分たちには関係ないものと思っているのです。私はかつて、成田空港の税関で覚せい剤押収の現場に立ち会う機会をえ、つぶさにその現場を見てきました。そのとき、私の目の前で、末端価格一グラム一七万円の白い粉が二キロ押収されました。私はそれをカメラに収め、早速授業で生徒たちに見せました。
現在は第二次の覚せい剤乱用期といわれています。昨年(一九九六年三覚せい剤乱用で検挙された者の数は、二万六千六二四人を越え一九八九年以降では最高となりました。このうち、高校生が二一四人で、前年度の九二人に比べて、二倍以上になりました。そして、この問題は今や暴力団だけに関わることではないのです。若者や主婦などにまで乱用の波は確実に押し寄せているのです。
シンナーをやっていた生徒からよく聞くのは、「そんながきっぽいもの止めて、これにしろよ」と、覚せい剤をすすめられたというケlスです。シンナーはゲイト・ウェイ・ドラッグと呼ばれて、覚せい剤などよりハードな麻薬への入り口と呼ばれていますが、こうした言葉からもそのことがうなずけます。
シンナーの密売人というのは、あの学校には何人客がいるかまで把握しているそうです。原価で一本五O円のものを二千五00円で売りつけ、一O本買うと一本おまけしてくれたりして、一度捕まえると決して放しません。買う方はお金がなくなると、今度は自分が売り付ける側にまわります。当然友達も次第に離れていき、シンナー仲間どうしの付き合いになります。こうなると、もういつ覚せい剤に手を出してもおかしくない状況といえるでしょう。
誘惑の手口はほかにもいくらでもあります。ことに最近では、すでに述べたように中・高生などの若者の汚染が急増し、更には、これまで全く無関係と思われていた家庭の主婦などにまで広がっていますが、そうした急増の背景には使用法の簡略化――従来、注射によっていたのが最近では吸引する方法ゃ、覚せい剤をSとかスピードと呼んで恐ろしいイメージが薄れたこと、さらには「ダイエットによく効く」「疲労回復の薬がある」「二日酔いにパッチリ効く」「とっておきの眠気覚ましだ」「むしゃくしゃが取れるぞ」「集中力がつく」などと言葉巧みにすすめられるなど、大変憂慮される状況となっています。

薬物教育の四つのポイント

やがて、どんな薬物であろうと即席に気分を変えたり、面倒なことやつらいことから逃れられるといわれるようなものには一切近づかないことだ、と生徒たちは互いに話し合うようになります。もともと、生きていくことはなかなか面倒なことなのです。人間関係は面倒だし勉強も面白くない。就職や進学など将来のことを考えるのもやっかいです。しかし、そうしたことは誰にでも当てはまることで、その面倒なことを手を抜かずにやっていくからこそ生きることの喜びも大きくなるのです。
こんなレポートを書いた生徒がいます。
「中三の二学期、成績が下がるところまで下がって、ゆく学校がないと思ったとき、友達と一緒にシンナーをやった。頭の中が真っしろけになっていい気持ち。でも、後で情けなくなった。ラリッているときは何もかも忘れても、切れたとき結局何も変わっていない自分がいる。そこに気づかない人は、どんどん自分を傷つけてしまう。自分の人生なんだから、私はもう絶対自分から逃げないでやっていこうと思う」
薬物の授業でぜひとも教えておきたいことは、次の四点に要約されます。
1、自分にもいつ忍び寄ってくるかわからない、身近かなものであること。
2、身体と心の両方を傷つける有害なものであること。
3、使用すれば依存が進行していくこと。
4、失ったもの(時間も、友人も、自分も)は取り返しがつかないこと。
好奇心や快楽のために軽い気持ちで使いはじめ、やがてはそれに依存するようになり、そして、切れたとき、今度は苦痛から逃れようと薬を使わずにいられなくなる。一度そこに踏み込んだ人は、自分の力だけでそこから抜け出すことは限りなく不可能に近く大変なことを、まず教室の中で、生徒たちにしっかりと認識させることです。

自分に問いかける生徒たち

最後に、授業の前に行なった生徒たちのアンケートの答を見ていただきましょう。
「シンナーは吸ったことがないからよく分からないけど、中学のとき吸っている子がやたらに多かった。結局、自分に害を及ぼすだけで、たばこみたいに回りの人に迷惑をかけないから吸う人は吸っても別にいいと思う」
「臭いので、そばですっている人がいると迷惑だ。値段も高いし、そんなものに興味を持つ人の気が知れない」
「吸ってみたいという好奇心はあるけど、吸いすぎて死にたくはない」
「マリファナは煙草の強いやつぐらいと思う」
「近くに米軍基地のあるディスコなどでは、みんなマリファナをやっているから一般的なのかな」
「覚せい剤より軽い気がする。すぐに手に入りそうな感じ」このように、ほとんどの生徒たちは、薬物についてそれほどしっかりした知識も、また、悪いこととか怖いものという意識も持っていないことが分かります。ところが授業を終えた後、生徒たちの考えはすっかり変わっています。次にその結果も見ていただきましょう。
「友達にシンナーで一0キロもやせてしまった子がいる。止めろといえなかったけど、授業で知ったことを教えてあげたい。もしも私の一番の親友がそうなって、何を言っても止めなかったら私はどうするだろう。友達でなくなるだろうか」
「どうして暴力団の人たちは、こんなものを売って利益を得ょうとするんだろう。いくらお金が欲しいからといって、他人の生活や人生を目茶目茶にして悪いと思わないんだろうか。買いたいと思う人がいなければ薬物なんか密輸しても仕方ないと諦めるはずだけど、そうならないのはどうしてだろう」
「薬物をやる人は、心から『いけないよ』と心配してくれる人がまわりにいないのかも知れない。誰からも仲間はずれにされてしまうのが怖いのかもしれない。私は今頑張ろうと思えるものがあるし、友達もたくさんいて幸せだと思う」
ほとんどの生徒が、「私だったらどうするだろう」「薬物が身近にある社会をどう考えたらいいか」と、自分に問いかけ、そして・自分なりの答えをはっきりと出しています。
私は生徒と廊下で擦れ違うとき、いきなり声をかけてみることがあります。
「おい、ちょっと待て、シンナーやりたいと思うことあるか」
「やだー、先生、失礼しちゃう!」生徒はきゃーきゃー笑いながら駆けて行く。
生徒たちには生き生きと羽ばたいてほしい。自分の健康はもとより、他人の健康を思いやり、健全な社会に思いを馳せる心の持ち主であってほしい。そう願いながら、今日も私は教壇に立って持ち前の大声を張り上げています。

〈三時間目〉未成年者と飲酒

自己実現について考える

第三回目の授業のテーマは「未成年者と飲酒」です。生徒たちはこれまでの授業でアルコールの害について、基本的なことを頭に入れています。そこで次は、この問題を自分たち一人一人の問題として考えるよう授業を進めます。喫煙にしろ飲酒にしろ、「いけないこと」と頭から禁じるだけでは、反発を招くだけで効果が上がりません。なぜなら生徒たちの多くは、喫煙や飲酒を自分なりの自己主張としてやっているのですから。
そこで指導する側としては、たばこを吸い酒を飲むことが決して正し自己主張の手段とはなりえないし、それどころか成長期にある精神・身体に多くの害をもたらすだけで何の得にもならないこと、それよりも、高校生として今しか出来ないことがあること、などをしっかり理解させなければなりません。
授業の冒頭で私は、生徒たちが将来どのような希望を持っているかを聞いてみました。自分らしさを大切にし将来に向かって進んでいくことを、教育現場では自己実現といっています。相撲とりは自分にとっての最高の相撲をとろうと考え、いずれは横綱となる夢を描くでしょう。噺家なら、当然真打を目指して修行するでしょう。
生徒たちはこれから六十年~七十年、あるいはそれ以上の人生を生きていくことになるわけです。
これだけの時聞があれば、やろうと思えば何でもできる。「さあ、そこで君たちの自己実現とは何か」ということになります。
こんなことを言うとあるいは、今の高校生たちは白けてしまう、と思われる向きもあるに違いありません。しかし、覚めているといわれる現代っ子もスポーツの感動は知っています。頑張って勝利した時の汗と涙の素晴らしさを知っています。そして何より生徒たちは、「その教師の授業にかける情熱」を感じ取ってくれるのです。教師なら誰でもそうだと思いますが、私も教室に入れば常に最高の授業をしようと全力を尽します。いい教師となることが、私にとっての自己実現なのです。

未成年者は酒の害を受けやすい

未成年者の飲酒にはどんな危険があるかを〈下記参照〉にまとめてみました。生徒がもっとも驚き興味を示すことは、インポテンツになるということです。体内に入ったアルコールは九割が肝臓で分解されますが、一部は精巣でも分解が行なわれます。分解して出来た毒性の強いアセトアルデヒドが、成長期の精巣を直撃するのです。
また、精巣内のアルコール脱水素酵素がアルコールの処理に追われると、本来の働きである性ホルモンを作る仕事がそっちのけになってしまい、インポテンツになったり性機能の低下が起こるのです。男性ホルモンが足りなくなると副腎皮質が補給に乗り出します。ところが、副腎で作られた男性ホルモンは皮下組織に入ると女性ホルモンに変身してしまうのです。その結果バストが膨らむなどの女性化現象が起こります。

ここは、この授業の山場ですからていねいに説明します。わが校は女生徒が圧倒的多数ですが、男女を問わず酒が強い男性は男らしい、という考えが見られます。ところが、この授業でその思い込みが見事にひっくり返るのです。この「アルコール・薬物」の七回の授業の後、ほとんどの女生徒が「大酒飲みとは結婚しない」と宣言します。
さて、もう一つの山場は脳細胞への影響です。アルコールは脳の神経細胞を破壊し脳を萎縮させます。「脳の発達のピークは何歳ごろと思うか」と生徒に聞いてみます。答えは二O歳でそれ以後は、神経細胞はどんどん消滅していくのです。アルコールはこれに拍車をかけるといわれています。
「今から飲んでいる人は、もうピークを過ぎて脳の衰退期に入っているかもしれないぞ」といいながら一人一人顔を眺めていくと、瞬間深刻な表情を浮かべる生徒がかなりいます。ここで『アルコール・シンドローム』(ASK発行)創刊号の一節を引いて生徒に聞かせます。「酒を飲んだ後、耳を澄ませてごらん、脳の神経細胞が悲鳴を上げながら壊れていく音が聞こえるよ」と。

狙われているのは君たちだ

未成年のうちから飲酒するなど、自分で自分の首を絞めるようなものだ、と大人は考えるかもしれせん。ところが生徒たちを取り巻く環境を見ていただきたいのです。まるで、飲め飲めとけしかけんばかりの風景が展開されています。たとえば酒の自動販売機、こんなものが国中至る所に置かれているのは、世界中を見渡しても日本だけです。「未成年者飲酒禁止法」という立派な法律があっても、年令を見分けることのできない自動販売機で、コイン一つで酒が買えるのです。
「先生はこの矛盾を声を大にして追及している。しかし、君たちは今、自動販売機がある社会で生活している。どうしたらいいか」と、問うと、自動販売機を全部とっぱらつてしまえ、という勇ましい意見の生徒もいます。しかし、ここではまず、自分たちの身を危険からいかに遠ざけるかについて話し合うよう指導します。
危険な誘惑はほかにもあります。その際たるものがテレビなどのコマーシャルです。企業は莫大なお金をかけて宣伝しています。そこで特に狙われているのが、若者と女性なのです。「君たちの好きなタレントの出ているお酒のコマーシャルがあるだろう。それらの中で、思わず飲みたくなるようなおいしそうなコマーシャルやかっこいいコマーシャルがあったら集めてきてほしい。新聞、雑誌そのほかなんでもいい。これが次の授業までの宿題です。

表 未成年の飲酒の危険

脳の発達は20歳がピーク
→アルコールは脳の神経細胞を破壊し、成長期の脳を老化させる
肝臓 肝臓が一生の聞に代謝できるアルコールの量には限度がある
→早く欽み始めると肝臓も早くダウンする
その他の
内臓
若年者はアルコール分解酵素が未成熟
→内蔵が長時間アルコールやアセトアノレデヒドの害にさらされる
生殖器 アルコールは成長期の精巣・卵巣を痛めつける
→インポテンツ、月経不順など性機能が低下す
依存症 早くから深い酔いを覚えると、大量に飲まないと酔えなくなる
→アルコール依存症への近道
自己実現 アルコールの酔いは困難な状況からの逃避手段になる
→困難に打ち勝って自己実現をめざす方法を学べない

〈二時間日〉アルコールの室口

手づくりのOHPやボードを使って

「アルコール・薬物」の授業は二時間目からいよいよ肝心なところへ入ります。テーマはアルコールの害。この日の授業は大変忙しい。授業のポイントを上げると、
1、アルコールが体・心・家庭などに及ぼす害
2、アルコール依存症とは何か
3、酔いとは何か
4、体内に入ったアルコールの分解過程
5、飲める体質・飲めない体質
これだけを一気にやてしまいます。五時限目の眠い授業でも生徒たちは居眠りしている暇はありません。では、「アルコールの害」といわれて生徒たちはまず何を思い浮べるのでしょうか。早速聞いてみましょう。

胃・腸・十二指腸・肝臓・すい臓障害・糖尿病.高血圧・心筋症・脳・神経障害・ガンなど
アルコール依存によるイライラ・疎外感・自信喪失・自己嫌悪・不眠・妄想・自殺など
信頼感の喪失・不和・嫉妬・暴力・経済破綻・離婚など
子供への虐待・情緒不安定・孤独・自己否定・登校拒否・非行・暴力なと
妊娠中の飲酒による胎児性アルコール症候群(奇形・知恵遅れ)発育不全・流産・死産など
二日酔いによる怠業・欠勤・ミス・病気欠勤・生産・能力低下・勤務中飲酒による事故など
交通事故・転落事故・過失火災・放火・けんか・傷害・性犯罪・暴力・殺人など

「飲酒運転をして交通事故を起こす」、「酔っ払ってけがをする」、「イッキ飲みでアルコール中毒になる」、「飲み過ぎて肝臓を悪くする」、「アル中になる」、等々いろいろな答えが返ってきます。新聞記事を集めさせた効果もあるのかよく知っています。生徒たちの答えが出尽くした頃を見せ、アルコールの害について整理します。私は、こうした図や表はすべて手ずつくりしOHP(投影フィルム)やボードにして授業に活用しています。OHPやボードにしておくと何度でも繰り返し使え、持ち運びにも便利だし、さらに必要なところはその場で書き込んだり注意点も指し示したり自由自在で、是非おすすめしたい方法です。

酒でなくなった有名人は

さて、このOHPを使ってアルコールが体・心・家庭に与える害・職場に与える害などを生徒に順番に読み上げてもらいます。アルコールの害で生徒がびっくりすることが二つあります。
一つは酒は身体に害を及ぼすだけではなく、家庭をめちゃくちゃにしたり家族を不幸にする。仕事を持っている人は仕事にも支障をきたすようになる。そういえば、と数人が手を上げる。「高校生が酒乱のお父さんを殺した事件があった……。」
もう一つ生徒が驚くのは、「酒がもとでかかった病気で死ぬことがある」という事実です。そこで「酒で死んだ有名人を誰か知っているか」と聞くと、生徒たちは互いに顔を見合わせ首をかしげているので、美空ひばり、石原裕次郎、江利チエミ、有吉佐和子……と名前を上げていくと、もちろん生徒たちは意外そうな顔をします。
一晩にウイスキーのボトル1~2本空けて平気だったという美空ひばりは、五二歳でなくなる十数年前から肝硬変に苦しんでいたそうです。死亡したときはアルコール性肝硬変の末期だったといいます。加えて大腿骨骨頭壊死という難病も抱えていました。どちらもアルコール依存症者によくみられる病気です。石原裕次郎は水がわりにビールをラッパ飲みしていたそうです。肝細胞がんで美空ひばりと同じ五二歳で亡くなりました。
江利チエミは吐いたものがのどに詰まって窒息死したと言われています。アルコール依存症者にはこうした危険も常につきまとっています。また、有吉佐和子の急死は、アルコールと睡眠薬の併用によると言われています。これも大変危険な行為です。こういう話をすると生徒たちは、シーンと静かになります。尾崎豊は生徒たちにとって今も憧れの人です。彼もアルコールと覚せい剤が原因だったと付け加えると、生徒たちは改めて恐ろしさを実感することになります。

アル中のイメージを変える

マスコミは市申し合わせたように黙っていますが、ここに上げた有名人たちはアルコール依存症だった可能性が高いのです。そこで次はアルコール依存症について話します。生徒たちにアル中のイメージを聞いてみると、「朝から酒を飲む」、「仕事もしないで駅や公園で寝転がっている」、「家族に暴力を振るい、妻子が逃げだす」などと、多くは答えます。
しかし、アルコール依存症は職業、性別、その他に関係なく誰でもがかかる病気です。有名人も、医者も学者もいます。もちろん普通のサラリーマンも大勢いるのです。若い人も女性も例外ではありません。むしろ、若い人や女性の飲酒は依存症になりやすく、問題が大きいことも強調しておくことが大切です。ここでは、アルコール依存症になるのはダメな人だ、という誤った考えを植えつけないよう気をつけなければなりません。あくまでも酒が原因の「病気」であることをしっかりと教えることです。しかも、一度かかると回復するのが大変厄介な病気であることです。
私のこれまでの経験によると、生徒の父親の一O人に一人は、何らかのアルコール問題を抱えているように思われます。酔って家族に暴力を振るう父親もいます。父親に問題のある生徒は、「アルコールが家庭生活に与える害」などの話になるとうつむいて発言出来なくなります。そうした生徒を傷つけないよう授業を進めることも、大切な授業の要点です。
そして、もう一つ忘れてならないことは、アルコール依存症は病気だからきちんと治療をすれば治ること、お酒を止めるための自助会――断酒会、AA(Alcoholic Anonymous)その他があることを教えることも大切です。もっとも問題なのは、本人も家族もそれが「病気」であることを知らずにいることなのです。

酔いとは何か

こんなにも害のあるものを人はなぜ好んで体内に入れるのだろうか。その答えは、酔うためです。では、酔いとは何か。生徒にしばらく考えさせてから「酔いとは、脳が麻市博すること」と、教えます。ここでも左の表をを使いながら、アルコールの濃度が高まるにしたがって脳の麻薄が広がっていく様子を説明します。
3-2-1
最初はアルコールに酔って大脳新皮質の活動が弱まって、理性が麻療するために心地よい酔いを感じるが、麻庫が小脳にまで広がるとまっすぐ歩くことができず千鳥足になります。さらに酔って麻療が海馬にまで及ぶと、自分でやったことを次の日に覚えていない(ブラックアウト)。そして、麻癖が呼吸中枢に及べば死んでしまいます。
左を見てほしい。麻療が脳全体におよび「泥酔」段階になると、急性アルコール中毒と呼びます。寒い季節には、意識がもうろうとして眠り込み凍死したり、吐いたものがのどに詰まって窒息死したり、車道に寝込んで車に跳ねられたりと、危険がいっぱいです。
ここに至る前の千鳥足の兆候は、「これ以上飲むと急性アルコール中毒になる、もう絶対に飲むな」のサインなのです。ところが、このサインが表れるまでにはおよそ三十分のタイムラグがあります。
飲んだアルコールが血管に吸収されて血中濃度が高まるには、三十分ほど時聞がかかるのです。では、飲むぺースが早いとどうなるか。たとえばイッキ飲みをした場合です。イッキ、イッキとはやしたてられ、立てつづけに流し込んだアルコールは、三十分かかって身体中に行き渡り、血液の中のアルコール濃度も一気に高くなります。気が付いたときには泥酔段階も通りこして、脳全体に麻療が広がって急性アルコール中毒です。これまでにも、実際、実に大勢の大学生や若者がイッキ飲みで大切な命を失っています。「イッキ、イッキ」とはやしたてる側の責任も大きく、イッキ飲みなど決してしない・させないと一言う心構えを準備させることが大切です。昨年、名古屋のある大学で起きたイッキのみ死亡事故に対して、市民団体が容疑者不特定のまま愛知県警に、傷害致死罪と傷害現場助勢罪で告発するというような事件も起こっています。

一単位をたたきこむ

アルコールの分解過程の中で特に大切なことは、私たちの身体にそなわった分解能力には、一定のスピードがあるということです。お酒を大量に飲めば分解にそれだけ時聞がかかるわけです。「君のお父さんはどれくらい飲む」とたずねると、「ウイスキーを、グラスで七、八杯かな」などと答える生徒が時々います。
「それは飲み過ぎだ」、というわけでアルコールの単位の話をします。日本酒なら一合、ビールは大ビン一本、ウイスキーならダブルで一杯。これが一単位です。一単位にはおおよそ二0グラムの純アルコールが含まれていますが、これが体内で分解されるためには約二~三時間が必要です。
したがって、三単位のアルコールが体内で分解されるためには、約八時間かかります。ということは、これ以上飲むと翌朝になっても体内にアルコールが残ってしまうことになります。酒くさい息を吐き、酔った状態でその日が始まる。車の運転をすれば立派な飲酒運転です。
生徒の頭にこの一単位の考えをたたきこみ、将来自分が酒を飲む場合にも害を受けないためにはせいぜい二単位までにしておくよう、教えます。とはいうものの、実を言うと、極たまには私も2単位を越してしまうことがあります。するとたちまち生徒たちに、「先生、お酒くさいよ。昨日何単位飲んだの」などと言われ、猛反省をさせられるというわけです。

飲める体質、飲めない体質

最後は体質の話です。白人や黒人は「飲める体質」ですが、日本人には「飲める体質」の人と「飲めない体質」の人が約半々といわれています。ここで、酵素ADHとALDHの登場です。体内に入ったアルコールは、まずADHの働きによってアセトアルデヒドになります。そして、このアセトアルデヒドはALDHの働きによって酢酸・炭酸ガス・水に分解されて最後は体外に排出されます。
飲めない体質の人というのは、このALDH酵素の働きの弱い人ということになります。では、こういう人が酒を飲むとどうなるか。アセトアルデヒドの分解が遅く体内にたまるために悪酔い、動停、頭痛、吐き気などをひき起こし大変苦しい状態になります。
生徒たちの多くは、実はアルコールを飲んだことがあるので、自分が飲めるか飲めないかをおおよそ知っています。「自分が飲めない体質と思う人」とたずねると、ためらいがちにばらばらと手が上がります。そこで話しておくことが四つあります。
1、飲めないのは体質によるので、練習しても飲めるようにはならないこと。
2、飲めないことは恥ずかしいことでも残念なことでもない。むしろ喜ぶべきことである。
3、飲める体質の人は、アルコールの害を受ける可能性もある。将来飲むとしたら、そのときはくれぐれも飲み方に気をつけなければならないこと。
4、飲めない人に酒をすすめるのは、毒をすすめるようなものである。絶対に無理強いしてはいけないこと。ということです。
ところで、生徒たちの多くが、実体験によって自分が飲める体質かどうかを知っているということは、大変憂慮すべきことです。しかしながら、お酒について科学的に知ることは、必要であり大切なことでしょう。そこで、パッチテストで自分の体質を簡単に調べる方法を指導します。パッチテストは、専用の粋創膏(市販)を腕にはりアルコールによる皮膚反応を調べ、飲める体質かそうではないか調べるものです。アルコールによる皮膚反応は、皮膚の細胞に含まれているアセトアルデヒド脱水素酵素の活性の有無によって、皮膚が赤くなるかどうかを調べます。赤くなればその人はお酒に弱い体質ということになります。私は現在、市販品を使って授業をする準備をすすめていますが、それまでは、保健室でやってもらうよう指示しています。

アルコール・薬物を保健体育で教えるコツ――六~七時間の授業展開

保健体育教師よ頑張ろう

わが校では従来から、保健体育の授業でアルコールの害についての指導を実施しています。その中でいくつか独自の方法も試みており、かなり満足すべき成果を上げています。そこで、その授業の模様をここで皆さんにご紹介したいと思います。
さて、保健体育の授業は、当然体育の教師が行なうわけですが、われわれ体育教師は、いつもトレパンに体操着という印象が強く、その上この格好で教壇に立って授業を進めるのは、われながら締まらない気がします。
そこで私は、保健体育の授業には気分を一新して、白衣を着て教室に向かうことにしています。すると、生徒たちもこころなし、ボールを小脇きに号令をかけている時とは違った表情で私を迎えてくれるような気がします。とはいえ、私のほうは、教壇に立っても運動場で身につけた大声は少しも変わらないのですが。
ところで、多くの方々は体育の先生というと頑強で病気しらず、健康そのものと思っておられることでしょう。しかし、私の見たところでは必ずしも健康的とは言えない先生が多いのです。その代表選手が、授業が終って職員室へ帰ってくるなり、たばこをプカプカやり始める先生です。酒豪もいます。私自身はたばこは吸いませんが、酒に関してはあまり大きいことは号一守えません。むちゃ飲みこそしないものの、時には休肝日と定めた日につい一杯ということもあるからです。生徒に健康教育をする立場のものとして、これは反省しなければなりません。自分も含めて、体育教師自身の意識改革がまずもって求められることかもしれません。

アルコール・薬物には七時間かけよう

現在、わが校では保健体育の授業を週一回ずつ一、二年生で履修しています。以前は二、三年でやっていたのですが、三年になると授業はほとんど二学期で終ってしまいます。時間が足りず、勢い駆け足で講義を進めざるをえない。そこで私が着任した年から、一、二年でやるようにプログラムを変更してもつらたのです。
保健体育で教えるべきことは数えきれないほどあります。その中で、私は「たばこ」と「アルコール」「薬物」の問題にかなりの比重を置いています。
参考までに私の授業のおおざっぱな割り振りを申し上げますと、「たばこ」に三時間、「アルコール・薬物」に六時間位を当てています。アルコールと薬物は、六~七時間の中で同時進行させながら教えます。別々に指導するよりずっと効率がいいし、生徒もより具体的に理解できるからです。六~七時間というと一年の実質的な時間数からみるとおよそ四分の一も割くことになり、少々取り過ぎと思われるかもしれませんが、しかし、どう考えてもこれくらいは必要なのです。
アルコールは現在、生徒たちにとってかなり身近かなものであり、そして同時に、大変危険なものでもあります。現在は危険でなくても、将来危険になる可能性もあります。そこでなぜ、どこが危険なのかを教えるためには、単に「飲み過ぎるとアルコール依存症や肝硬変になって早死するぞ」と、脅しを掛けるだけでは抑止力になりません。「だれでもそうなるとは限らないんだから、自分はならないほうにかけて飲む」といわれれば、はいそうですか、となってしまう。第一「自分の身体なんだから、自分の勝手だ。先生の知ったことか」といわれればそれまでです。
生徒にそんなふうにいわれて戸惑わないためには、どうしても六1七時間が必要なのです。これだけの時間があれば、生徒の頭にアルコールの本当の姿がとことん叩き込めます。メーカーの宣伝文句でなく、友人の甘い誘いの言葉でもなく、父親たちの考えているようなお酒の効用でもない、本当の姿です。ところがその結果、ごくたまには私が飲み過ぎて、翌朝学校で生徒たちにここぞとばかりお説教をくらい「ごめんなさい」と謝るはめになることもあるのですが。
印象的な成果があります。アルコールの授業を終えて数カ月たった頃、今度は結婚生活をテーマにした授業の時のことです。私が授業に入る前、「理想の結婚相手の条件を、幾つでもいいから書いて出しなさい」と生徒たちに言って用紙を配ったところ、年収についての条件を厳しく上げたもの、親との別居が条件というもの、土地付き家付きが条件というもの、中には性的能力について注文をつけるものまであって、毎日接していてそれなりに生徒のことは理解しているつもりでありながら、なるほど現代っ子というのはこういうものかと今更ながら感心したりあきれたりしたのでした。
ところが、予想外のことがあったのです。それは、「毎晩お酒を飲む人は避ける」、「飲み過ぎない人」、「飲酒しない人」、「酒をたくさん飲む女性はだめ」と。あれ、と思ったら、出てくる出てくる、かなりの生徒が酒に関する条件を付けているのです。また、「たばこを吸わない人」という答えも大変多く、これなども授業の成果の表れではないかと、読みながらひとりほくそ笑んだことでした。

春休みの「課題」から授業は始まる

さて次は、一年間のどの時期にその七時間をとるかです。この六~七時間は、もちろん連続していなければ意味がありません。前の授業でやったことを生徒が忘れてしまっては、話を進めるうえで支障をきたすし後で述べる資料の保存にも問題が出てきます。
ところが連続して六~七時間とるとなると結構難しい。学校行事などでつぶれることも多いし、月曜に授業があるクラスなど、代休のあおりで一カ月も授業ができないこともあります。しかし、のびのびになった挙旬、途中で夏休みや冬休みに突入してしまうのは、何とも具合が悪いのです。
そこで私の場合、一学期の最初の授業から早速アルコールの授業を始めます。それでも何だかんだと授業が流れて、結局は夏休み直前までかかってしまいます。休み開けすぐに始めるのには、もう一つ理由があります。それは二年生の場合ですが、新学期が始まる前の休みを有効に使って、私は生徒に一つ課題を与えることにしています。それは、休みの聞に、新聞や雑誌を読んでアルコール、薬物に関する記事を集めてスクラップブックを作ってもらうのです。

1時間でもこれだけ教えられる
アルコールで4時間、薬物で3時間とるのは無理、という声も多い。そこで、1時間でも展開可能なアルコールの授業を表にしました。できれば2時間とって、パッチテストやビデオ、ディスカッションなど生徒が参加し実感できる部分を盛り込むとよいでしょう。なお、ここではアルコールだけを取り上げたが、薬物については中学でシンナーをぜひ、高校ではシンナー・マリファナ・覚せい剤jを扱ってほしい。

「中学」ポイントはアルコールの急性影響と、未成年者の飲酒の害

中学生の飲酒実態 どんな理由でどれくらい飲んでいるか。事前に「わが校の飲酒実態」をアンケト調査しでもよい。
酔いとはなにか 理性を司る大脳のコントロールが「マヒ」して酔いを感じる。アルコール血中濃度が高まるにつれ脳のマヒは進行。
急性アルコール中毒・イッキ飲みの危険 泥酔状態を過ぎるとさまざまな死の危険が。実例を話しながら生徒によく実感させる。
飲める体質 飲めない体質 アルコールは体内でどのように分解されるか。遺伝による体質の違いをノマッチテストで実感させる。
未成年者の飲酒の 若い時代はしらふでストレスと立ち向かうことを覚える時
デメリット 期。飲酒に逃げることの危険。
未成年者飲酒禁止法 未成年者を罰するのではなく守る法律。

「高校」ポイントは、アルコールの慢性影響と、社会的視点

高校生の飲酒実態 どんな理由でどれくらい飲んでいるか。事前に「わが校の飲酒実態」をアンケト調査しでもよい。
アルコールは「薬物」 依存を引き起こす「薬物」とは。
身体への影響 肝臓の病気、その他の障害について。
アルコーノレ依存症 依存症は長年飲み続けるとかかる病気。治療で回復する。
女性・若者の飲酒増加 飲酒増加の背景。CM、自販機問題など。
飲酒の女性への影響 女性は男性の半分の飲酒期間で、肝硬変や依存症に。妊娠中の飲酒はFAS(アルコーノレ胎児性症候群)の危険が。

スクラップブックに関しては、たばこの授業の場合も同じ方法をとっています。夏休みの宿題としてスクラップ作業をやってもらい、生徒はそれぞれ自分なりのたばこの情報を持参して授業の席に着くことになります。こうしたやり方も、生徒が進級するにつれて次第になれてきて、なかなか手の込んだスクラップブックも登場するようになります。「学生の飲酒」、「飲酒と交通事故」、「喫煙と飲酒の関係」、「シンナーと麻薬」、「外国での出来事」、そのほか、テーマごとにそれぞれ自分なりに整理して、それぞれの記事に細かい字でコメントを書き込んだ優秀作もあります。面倒なようですが、やらせてみると生徒たちも結構楽しそうで、毎朝父親と新聞を争って読んだ、とうれしそうに報告する生徒も出できたりします。ちなみに、宿題を提出しない生徒はこれまで一人もいません。
春休みというとたった二週間の短い期間ですが、アルコール・薬物に関する記事はほとんど毎日のように載っています。前年の夏休みのものと合わせると結構な厚さになります。貴校でも一度やってみてはいかがでしょう。
生徒の作ったスクラップブックは、私が大急ぎで目を通した後に一回目の授業で返却します。これは、これからの授業の大切な資料となります。それぞれの授業のポイントで、関連のある記事を生徒が捜し出して発表しあいます。たとえば、「未成年と飲酒」についての授業で、「このテーマで何か思いつくことがあるか」と聞くと、生徒はすかさず自分のスクラップブックの中から「大学生がコンパでイッキ飲み。急性アルコール中毒で死亡」の記事を見つけ出して読みあげます。そこで私は、「イッキ飲みの危険について」から入ることにします。
このようにして生徒は、教師の話と自分で前もって得た情報とを絶えず照らし合わせることができ、問題をより身近なものとして考えることができるようになります。そしてまた、授業への興味を持続させるためにも極めて有効な方法です。なお、六1七時間の授業の構成は、表にしてありますので貴校での授業計画の参考にご利用下さい。

表1「アルコール・薬物」7時間の授業の展開

I 薬物依存の特徴
依存性薬物の分類と特徴とは?
アルコーノレは危険な「薬物」だ
すべての薬物は精神依存をきたす
なぜ人は薬物を求めるのか?
II アルコールの害
酒を飲むとどうして酔うのか?
アルコールが体や心に及ぼす影響
家庭や社会生活に及ぼす影響
飲める人と飲めない人がいるのはなぜ?
Ⅲ 未成年者と飲酒
若いときの「自己実現」について考えよう
アルコールが脳に与える影響
男性・女性の生殖機能に与える影響
IV 女性と飲酒
女性の飲酒が急増している
かっこいいお酒のCMのターゲットは誰?
女性はなぜ「酒に弱い」のか?
飲酒が胎児に与える影響は深刻男の子もちゃんと知っておこう
Ⅴ シンナの危険
こんなに身近にある落し穴
シンナは「ゲイト・ウェイ・ドラッグ」
VI マリファナの危険
世界でもっともポピュラーな薬物
「マリファナはタバコよりまし」はウソ
VII 覚せい剤の危険
若者や女性も狙われている
最後に
薬物の誘惑に負けないために「自己実現」の人生を楽しもう